Artist Profile

Adachi Yohei

足立陽平

Adachi Yohei

1999-2002 Graduated from Arts course of Asahi-gaoka Aichi Prefectual High School,Japan
2002-2006 Graduated from Oil Paintings course of the Kanazawa College of Art,Japan
1999-2002 愛知県立旭丘高等学校美術科卒業
2002-2006 金沢美術工芸大学美術科油画専攻卒業

Artist Message

Mother. You can’t escape from her, but I tried once as you might have too. She was and is a classical piano teacher and she taught me rigorously how to play piano in a traditional way. Calligraphy was also on the list of art lessons that she put me into. My reactionary move was to get into the world of painting, thinking I would be able to express myself apart from traditions and conventions. I eventually majored in oil painting in Kanazawa College of Art. But as I lived in the city with many dimensions of Japanese culture still in its full vigor and beauty, I started to appreciate the Japanese traditional art and found it precious that we retain and pass it on.

In my 20’s, I challenged myself in the realm of expression by trying many different genres of art such as three-dimensional work and installation art as well as by coming back to the piano play.

When I was 30 years old, I founded ADC ART, believing that “art is not just for self-expression, but it can contribute to the society.” I thought, “It is not that artists should express their thought only. I can connect to the feeling and desire of those who want to paint and express but are not able to, and I can translate it into a piece of art on behalf of them. I would go and paint anywhere to see their happy faces.”

It seems that artistry and entrepreneurship don’t go together in Japan. So many artists do non-art-related work to stay in the world of art. I will change this so that artists can make a living through connecting art to many different fields of human activity.

No need to withdraw into our shells. We can open ourselves up to the world, share the joy of art making with those who love and appreciate art, and collaborate with our fellow artists. That’s the moment your universe comes to revolve around you. I have been playing my part in order to have in Japan more artists who rejoice with the world.

My world has got expanded wide open. My love and understanding of the traditional culture that my mother showed me has deepened. I now feel how wonderful it is to create, recreate, and procreate for the continuation of life and art.

I have been imagining universe, stream of time, my soul, and my calling all in one map. That became the basis of my work. Universe is inside us, where reside infinite possibilities. We ought to face our fear and anxiety and overcome them to open the door to our destiny. Then, we will realize that love has always been there carried on by generations.

Thank you very much.

幼少の頃からクラシックピアノ教室で教師をする母に伝統的な文化を教えられてきた。
ピアノや書道を離れ、伝統やしきたりに囚われることなく自分を表現できる絵の道を志し、油絵を専攻する。
美しい日本の伝統文化の華が今も咲き誇る北陸地方の金沢にて、学生生活を送るうち、
自然と伝統的なものや、受け継がれることへの感謝に気づくようになる。

20代の頃は、絵画にこだわらず立体やインスタレーション、ピアノへの回帰など様々な表現手法により、自分を表現することにチャレンジする。

30歳の時、「ただ自分を表現するだけではなく、アートで社会に貢献できることをする」と思い立ちADC ARTを創立する。
「自分だけの思想を描くことだけが芸術家の仕事ではない。自分では描けないけれど何か表現したいと考えているお客様の想いを捉えて、喜ぶ顔を想像しながら、どんな場所にでも描く。」

日本ではほとんどの芸術家は起業しない。
芸術を続けるために、他の無関係な仕事を本業として続ける人が非常に多い。
私はその常識を変えていく。
芸術家が芸術を生業として生きられる世界へと。

自分の殻に閉じこもることなく、世界と繋がり、芸術を愛しその存在を受け止めてくれる人々や、他の芸術家とも喜びを共有する。
それはまた、自分を中心として宇宙が一つになる喜びの瞬間でもある。
そのような喜びを知る芸術家が、この日本で少しでも増えるように活動している。

母に与えてもらった伝統文化への理解と愛はさらに深まり、受け継がれていく命の素晴らしさを芸術にも感じるようになった。
「宇宙・時間・魂・使命」それらが一つの地図のように思い描かれ、私の仕事の基準となっている。
宇宙は我々の内に存在する。無限の可能性は我々一人一人の宇宙に宿っている。
自らの恐れや不安をみつめて、自らの恐怖を恐れることなく、自ら運命を拓く。
その時、私たちの前には時間を超えて受け継がれる愛が、世界中に存在していることに気づくことができるだろう。

ありがとうございます。

Art Work

Folding Screen [Four Seasons]

風炉先屏風「四季」

“Shiki– Four seasons.” Folding Screens. Each screen expresses one of the seasons of Japan reflected through universe. Spring has Sakura-cherry blossom. Summer has Hotaru- fireflies. Autumn has Momiji- colored leaves. And, winter has Yuki- falling snow. If you see the screens again and again, you may have different impressions. The seasons come and go every year, but you never see the same face of season again.

宇宙 連作 永遠に続く時間。右から左へ何度も繰り返し時をめぐる。
日本に訪れる四季を星空の四季として表現している。
春は桜、夏は蛍、秋は紅葉、冬は雪
渦を描いて巡る季節は何度も見返すと少しずつ印象が変わっていく。
しかしまたしばらくすると元の絵に見えてくる。
永遠の渦のように。

仕様

木の骨組みに和紙を7層貼り、裏は金箔を圧した和紙を貼り、仕上げに福井県越前の絹を貼っている。
枠は伝統的な艶消しの漆を溜塗している。(富山県南砺市の表具師、岩崎正克氏の仕立てによる)
絵画は岐阜県の伝統工芸品である美濃和紙に日本画の水干絵具と膠、金粉を用いて描いている。

高さは今までの風炉先屏風になかった新しい高さに設定している。
主人と客との結界として、程よい距離になるものを岩崎氏が考案した。
全体の仕立てとしては古来よりの伝統技法の集大成であるが、
絵画は日本画の画材ではあるものの、油絵や現代アートの手法で描かれている。

風炉先屏風とは

茶の湯に用いられる道具の一つ。
炉などの茶道具の後ろに置かれ、風よけや間仕切り、背景として使用されため、
白無地や簡単な書や水墨画のような風景画等の、地味な色柄で、主張しないように作られる。
しかし、茶道具の中における位は高く、床の間にある掛け軸と香炉の次とされ、
畳に置く道具の中では最も重要である。
最も重要であるにも関わらず、他の茶道具を引き立てるために一番地味に作られ、注目されることが少ない。

茶の湯を追求すると必ず宇宙に行きつく。
宇宙の本質を陰陽の調和と五行の循環と捉えた陰陽五行の考え方に沿っている。
自然の中で茶を愉しむことによって、そこに居ながらにして宇宙の秩序や摂理を肌で感じることができる。
お茶の道具や所作は全て陰陽で表すことができ、その場に集うすべての人や物が小宇宙を創り出し、陰陽の調和をとる。

茶室は螺旋に組まれた畳で渦を巻く宇宙を表す。四角い部屋は陽の男性。
茶道具たちは皆丸く、円を描く所作と共に、陰の女性を表す。やさしさ、おもてなしの心、気遣いの女性。
それぞれが五行の意味を持つ茶道具の後ろで全体をまとめ、主人と客との空間を演出するのが
四角い風炉先屏風である。
陰と陽、どちらが欠けても場が成り立たず、互いに補い合う世界。

茶の湯の集いの中で心静かに其々の内なる宇宙を体感することができるはず。

しかし、宇宙の真理は秘するべきもの。
日本には「見えないものこそ尊い」という思想がある。
神も信心も思いやりも愛も、内なる宇宙も、見えないけれど感じるもの。
茶の湯の世界でも、規則に則り茶を飲むだけでは、その事に気づけぬように、宇宙が隠されてきた。

また、古来より占いや天文学、宇宙の真理は権力者が特権として民に隠してきた。
茶の湯を考案した先人たちは囲碁や武術と同じように、
遊戯や趣味の奥深くに隠すことで、権力者たちに気づかれぬよう
古代より継承された宇宙の真理を伝え残そうとした。

現在、私達は長年隠されてきた真実に今一度目覚めつつある。
誰もが望めば宇宙の真理を探究することができる時代になった。
今や隠す必要がなくなった秘密は、今も規則に則り、大きな声では語られる事がない。

茶の世界の中において、誰も曝け出さなかった真理を
今こそ
新時代の幕開けと共に目で見える形に現す。
伝統や規則への破壊衝動や反抗心によるものではない。

そこには調和と循環がある。
それこそが世界が今求めているものである。

Folding Screen [Universe]

風炉先屏風「宇宙」

“Uchu- Universe.” Folding Screen. In a Japanese tea ceremony, a pair of folding screens is put to show the boundary of the inner and outer world. This work titled “Universe” express the depth of the inner and outer space. If you see it with a calm mind, you may find the universe inside of yourself. The framework is Japanese, but the method used on the screen derives from modern art.

宇宙 連作 風炉先屏風「宇宙」
結界の内なる宇宙の広がりを現し、静かに流れる川。
黙って目を凝らすと自らの深遠が映りこむようだ。

仕様

木の骨組みに和紙を7層貼り、裏は金箔を圧した和紙を貼り、仕上げに福井県越前の絹を貼っている。
枠は伝統的な艶消しの漆を溜塗している。(富山県南砺市の表具師、岩崎正克氏の仕立てによる)
絵画は岐阜県の伝統工芸品である美濃和紙に日本画の水干絵具と膠、金粉を用いて描いている。

高さは今までの風炉先屏風になかった新しい高さに設定している。
主人と客との結界として、程よい距離になるものを岩崎氏が考案した。
全体の仕立てとしては古来よりの伝統技法の集大成であるが、
絵画は日本画の画材ではあるものの、油絵や現代アートの手法で描かれている。

Hanging Scroll [ Milky Way spread over a night sky]

掛軸 「天の川」

“Amanogawa – Milky Way spread over a night sky.” Kakejiku, Hanging scroll. This work breaks the rule of Japanese tradition regarding hanging scrolls, which says one is not allowed to paint on picture frames. However I tried proving that frames could be recognized as a part of the canvas. I hope you feel the expansion of the universe.

宇宙 連作 作品タイトルは、天(宇宙)を映す川、という意味が含まれている
通常は、描かれた作品を後に表装するが、
表装済みの真っ白の掛軸に描く場合は、作者は表装部分を汚さないように気をつける必要がある。
この作品の水彩画の夜は和紙の外に広がり、枠を超えていく。
伝統的な掛軸としては「とんでもない無作法」である。
しかし世界はいつでも、我々の認識をこえていくことができる。
規則は生まれ変わり続けることが可能である。

仕様

形は袋表具 格式は真行草の草の形 仕様裂地は正絹筋入り魚子(ななこ) 手漉き和紙 富山の名水を使用した手作り糊
軸棒は杉 軸先は白磁 清水焼

掛軸とは

書や東洋画などを掛けて鑑賞できるように表装したもので、下端に装着した軸木に巻きつけて保管する。
書画などの周囲に表装裂(きれ)や紙を配し、複合材料を継ぎ合わせて、裏打ちを施して調整し、補強する構造である。
表装された掛軸は、床の間などに掛けて鑑賞される。
掛物(かけもの)とも呼ばれ、日本の室内装飾では重要な役割を果たしている。

掛軸は時節や行事、来客などによって最もその場にふさわしいものに掛け替えて楽しまれる。
それは、掛軸の楽しみ方のひとつでもある。

この作品は掛軸の仕様としては最も一般的な表装でまとめられている。
しかし、その一つ一つは完璧に吟味され、本物の職人の仕事である。
格式は本来の形式から崩されることで、心情を表しやすい形とされる草の形。

床の間に掛軸をかけることで、部屋には主題が生まれる。
空間にどのような世界・宇宙を描き出すのか。
主人の心が最も表されるのが掛軸である。